「だいじょ……って、おい、またおまえはぁ!」


そうやって五十鈴さんがまた憤慨したのは倒れた藤馬さんが、事も無げに「だりぃ」と言ったからだった。


「いつ以来だよ、たくよー。腸を蝶々結びにされた時以来か?ちょーひさんじゃん、俺。まーた一年近く本調子に戻んねえよ、奥さま犯せねえ」


「お、ま、え、はーっ。痛い目みて懲りろ!こんな時にまでそんなことを……!」


「はあ?男の死活問題じゃん?やれるかやれねえかって、けっこー重要だぜ。ま、今回は両手ともに残ったから不自由はねえだろうが。あ゛ーでも、右目はねえわ」


そうぼやかれたことで、やはり右目は傷を負っているのだと確信する。血の量から言って、もしかしたら失明でもしているんじゃないのかと不安になった。