中指斬残、捌断ち儀



怒りが冷めない今――明子が離婚したいと言い、貞夫とて乗る気であるこの波を逃すわけにはいかなかった。


もはや離婚までのレールは引かれているようなもの。ここで渉をどうするかの分岐点があるものなら、明子の父親にとって『面白くない展開』へと進むかもしれない。


だからこそ、明子の父親は堪えていた。


怒りを沸かせようが、煮やそうが、喜美子に楯突くわけにはいかない。


厄介なモノを引き取ってもらうためにも。


――そんな双方の考えは露見することもなく、『渉のためだから』と美化精神で蓋をしている本心なのだが。


喜美子でなくとも、この『お前しかいない』というポジションを有意義に使いたくなるものだろう。