「やめっ、落ち着け!」
「止めないでよっ、ふざけっ、私がどれだけっ死ねっ、もう死ねよっ、あたまおかしっブスがっ気狂いこのっいかれてっ、だから止めないでよ!」
何を言っているか汲み取りにくい息を荒げた明子を、貞夫は強引に和室から追い出した。
部屋の外からしばらく明子が物を投げたり、金切り声が飛んできたが、喜美子は乱れた衣服を直しながら、まるで猿が喚いているのを見たかのように嫌な笑みを浮かべていた。
義父は大丈夫かと貞夫は思えど、顔をゆでダコのようにして、目を見開いているのだから、これはいつ殴りかかってもおかしくないなと判断できる。
明子同様に席を外してもらうことも考えたが、義父の目の敵たるのは貞夫も同じだ。


