「ありがとう、ございます」
やっぱり藤馬さんですね、と安心した笑みを見せた渉に見向きもせずに唾を吐き捨てる当の人。
まだ色々と言いたかったが、五十鈴も心配であると渉は藤馬に背を向けた。
「五十鈴さん……!」
動けない彼女に駆け寄る渉。それを五十鈴はほっとしたかのように、力を抜いて笑ってみせた。
相変わらず動けない檻の中でも、お前が無事ならいいと喜んでも見せた。
もうこれで終わりなのだと。ひどい悪夢は過ぎ去ると一息つくつもりだったが――ふと、気がかりがあった。
こちらの決め手たる藤馬。反則技を使う奴の性格を、五十鈴は嫌というほど知っている。
だから、思ったんだ。
『時間かけてらんねえ』との言葉に違和感がある、と。


