「絶対に、帰ろうな」
出掛けの言葉が喉で霧散した。
“いつもの笑顔で言われたこと”に渉は言葉を無くしたんだ。
お日さまみたいな優しい人に、幸せな毎日。渉の帰るべき居場所に、“一緒に帰ろう”って――
「僕は……」
だからまだバカなんだと、唇を噛む。
五十鈴は助けるだけでなく、“助かる気持ち”でいたんだ。
こんなところで終わらせない、またあのいつもに帰ろうと渉の手を繋いでいようとしたのに、肝心のこちらが『もう終わり』だと諦めていた。
「そっか……」
さっきの疑問が解けた。
こんな場面で使う言葉。
助けてでも、逃げてでもない。やっぱり分からないことは全部彼女が教えてくれるんだ。


