大切な人が傷つけば、僕も傷つく――
五十鈴からしてみれば、渉が傷つくから私が傷つくなのだろう。
だったらこの場合、なんて言葉をかければいいのか渉には分からなかった。
助けて、だなんて大切な人を死にそうな目にしてでも――誰かを犠牲にしてでも言うべきなのか。
逃げて、だなんて死に物狂いで助けようとしてくれる彼女の信念を打ち砕いてまでその身を案じるべきか。
分からなかった。
二人に一人、どちらか一方しか助からない――いいや、もしかしたら“誰も助からない”かもしれないこの場面で適した言葉とは何だ?
「五十鈴さ……」
彼女のもとに行こうとすれば、呪物(それら)が阻む。
あっちは違うよ、と道の間違いを正すかのように、“ここでいいんだ”と子供から行き先を奪う。


