直立し斜めに重なりと無造作に降り固まった卒塔婆。本来、亡くなった人に対しての追善供養に用いられる板のはずが、禍々しい。
梵字とも取れないでたらめな文字の羅列は、言葉を忘れた人の訴え。
「立ち入るな、か……っ」
その訴えが書かれた卒塔婆がこうして五十鈴の行く手を阻むのならば、そうとしか思えない。
また同じことをすれば、卒塔婆の雨で体を貫かれるであろう。
痛みの想像は恐怖に通じる。痛覚が疎ましくなり、そもそも生きていること自体が嫌になってくる生への逃避が、この境界線の向こうで待っている。
「――、だから何だというんだ!」
そんな恐怖、渉を失うことに比べたら微々たるものじゃないか。


