『……』
ふと、囁きが聞こえてきた。
ぼそぼそと何人かが集まり、会話しているような。
男か女か、子供か大人かさえも分からない。一つの声に複数の人物が混じった音響は、静寂の水面に一石を投じる。
『だめ』『いい』『だめ』『しかたがない』『だめ』『とられる』『まだ』『うばわれる』『……』『わたしが』『わたしが』『でも』『しよう』『おんなじ』『かまわない』『だいじょうぶ』『そう』『できる』『もう』『した』『だから』『しようよ』
波打つ周波数が僕の耳を通っていくようだった。
賛成と反対。
やるかやらないか。
そんな対立は、ある程度の話し合いで『やる』となったらしい。
“それら”が何の話し合いをしていたかは分からない。でも何となくだが、僕が関係していると思った。
――だって。


