中指斬残、捌断ち儀



(二)


良くないものがたくさんいる。


白黒の写真を覗いたような懐古に駆られた心が、たゆたうように静かな落ち着きを僕に与えてくれた。


耳鳴りがしそうなほどの静寂は深海の無音。身体中にほどよい圧力がかかり、このままどこまでも沈んでいきそうだった。


光をまったく通さない深海は闇の中でしかない。どこを見ても、どんなに手を伸ばしても、もといた場所には戻れない。


抗えない沈没。
いや、そもそも、僕は沈んでいるのか?


水の中にいるような抵抗感があったからそう思ったけど、肺が膨らむ。息はできていた。


呼吸の過程で青臭さを覚える。緑に囲まれた春夏秋冬の家よりも、もっと濃厚な。腐水を吸った藻みたいだ、伯母さんがかけていた水の匂いと近いかもしれない。