「つぅ……!」
それは、予期せぬ幸運だった。
手の痛みで夢から醒めたような気分を味わう。
知らずと渉を抱きしめていた手に力を加え続けていたらしい、痛覚が働き醒めた頭を抱えて苦悶する。
他人の人格が乗り移ったかのような、自我を見失い、自身の名前を忘れかけたが。
「っ、いす、ず……!」
よし取り戻したと、己が名を呼び、まだ正常であることを確認する。
“理解したら狂うモノ”、それは単に怖くて気がふれるという意味ではなく、ソレの在り方に対して受容してしまったさいの感化。
首を吊られたまま、まだそこに在り続けるなど、痛みと苦しみを知るものならば『悲惨な光景』と判別してしまう。
つまりは、同情。
理解してしまったソレへの想いに漬け込まれたら――ソレが入り込む隙間を与えたら最後、自我が迷子となる。


