人間時の右目では、今まで影すらも認識できなかったというのに、どうして今になって?
疑念さえも、恐怖前にすれば問う気にもなれない。
黄昏時の影。
今は朝で、真逆に近い時間軸の印象を持ったのは、あまりにもソレが“儚い”と思ったからだ。
踏まれた影法師のような、千の虫がひしめき合う気味悪さもありながら、今こうして“はっきり見る”とだいぶ印象が変わっていた。
人型に形状記憶された陽炎が四肢を形成している。
だらんと垂れ下がった手足の長さはひどくちぐはぐだ。足よりも手が長い。肩から脱臼して骨の繋がりがない伸びた腕の先は膝元まであった。
ゆらゆら――
風に煽られた葉のように“中指がないやけに長い手”が揺らめく。


