それが五十鈴にとっての痛みであった。
虚像を見る脳内の識別を一度閉じて、新たに切り替える無理難題は、この手だからこそできた。
先ほど、藤馬の“おまじない”で痛まなくなった手だったが、こうして叩きつければ通常の反応をしてくれる。
猛烈なる痛みで閉じた意識をまた覚醒させれば、そこに広がるは暗示がない世界。
藤馬が怖いと震え上がったことも同じことをして難を免れた。
“想定呪術”の穴。
分かってしまえば造作もないが、対抗手段が捨て身の技となれば諸刃でしかないだろう。
「わ、た……」
右目に映る真実を捉えた五十鈴は、すぐにでも渉を助けようとしたが、痛みが邪魔をする。


