姓の変更ができること自体が貞夫には初耳だった。
大概の人とて初耳なことだろうとも、法律上、氏の変更というものは『やむを得ない事由』というのがあれば認められている。
この『やむを得ない事由』というのは、『社会生活上、氏を変更しなければならない真に止むを得ない事情がある』に基づき、家庭裁判所側が判断するわけだが、もちろん、ほいほいと変更できるわけもない。
氏の変更とは、あくまでも『例外的に』の文字がつけられることである。
春夏秋冬(ひととせ)の氏が、『やむを得ない事由』に該当したところで変更可能になったのも例外的――特例として認められたとしても、またそれを戻すとなれば、よほどの経緯を辿ったに違いないと推察する。


