先ほど原型を失ったはずの鋏が、何事もなかったかのように寝そべるのを認識して、やはり“当たり”だったかと五十鈴は白に呑まれる意識を鮮明にしていく。
“想定呪術”。
その発端は信じる気持ちにある。
藤馬の言った言葉をう呑みないし、僅かでも信じてしまえばそれは“聞かされた当人の中で現実”となる。
思い込みの絶対化。天井のシミを人の顔と指摘されたら、それ以外のものには見えなくなってしまうという、そんな暗示をかけられたならば、脱出法は一つだけだ。
意識、しなければいい。
己が自身の想像で作られた虚像に見向きもできないほどの衝撃があればいい。
虚像を叩き壊すほどの、そんなふざけた口車に乗せられた脳内を無理矢理に叱咤するような鉄槌を。


