「あなたが明子の旦那さんね。改めまして、春夏秋冬喜美子(ひととせ・きみこ)と申します」
正座をしながらの軽い会釈に貞夫はマナーとして、会釈を返した。
明子が「こんな奴に」と頭を下げた貞夫を睨むも、今が初対面たる貞夫はそこまで喜美子を危険視できずにいた。
話だけならば危ない人、リビングじゃなくて和室というあたりも気にかかったが、話しをする素振りは、愛想良い近所のおばさんだ。
パーマがかかった肩口までの髪に、盛り上がった前髪、エナメルのバックと金のネックレスがスナックのママとも思えようが、笑う目尻にできたシワが愛嬌さえも出している。
話してみて安心できる表情がにこやかすぎるものだから、『本当にこの人が?』と貞夫は聞きたくもなっていた。


