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「まったく変わってませんねぇ、この家。あたしが出ていったときのままだわ」
おほほ、としとやかに笑う女を目の前にしても、貞夫の緊張は解かれなかった。
リビングに入ってきた四人目――喜美子のおかげで、立てていた予定が一気に崩れたようだった。
渉を預けるのだから、近々会いに行くつもりでいたのにはいたが、まさか喜美子自らがこちらに出向くとは思いもしなかった。
それについては明子ならず義理両親も同じらしく、『向こうで会った』と挨拶回りしていた際に出会しただけと言っていたが、まさかこちらまで来るとは予想外だったか、先ほどから場の空気が重い。
義父は今にも怒り出しそうな顔をし、明子は汚物でも見るかのように顔を歪め、義母に関しては和室から出ていった。


