「ごめんな……」
判子を押したあとに、ぼそりと貞夫は謝った。
渉に向けて、渉のいないところで、不出来な父親でごめんなと謝り――その言葉が、良心の呵責が傷んだ自身への絆創膏だとも気づかずに、貞夫は謝罪を口にした。
記入済みの離婚届を役所に提出すれば、これで百々から解放されるわけだが、これから財産分与について確認の意味合いで話さなければならないために、貞夫は明子たちの帰りを待った。
年明けとあってか親戚に挨拶回りをしているらしい。
午後三時には戻ると言っていたのだが、長針が三十分も過ぎているのを伝えてくる。
時間にルーズだなんてと貞夫は思い、天井を見上げた。
天井というよりは、ふと二回で昼寝をする渉が気になっての行動だ。


