中指斬残、捌断ち儀



渉を捨てると義父から言われたときは、散々つっぱねてみたものの、もう変わらない現状に疲れはて、意気消沈となっていた。


そこに先ほどの美化精神を連ねてみれば、これしか手がないと、一本の藁に見えるほどすがりたくなってしまった。


自身のことは棚上げで、渉にいけないことをしていると分かっていながら、親として許されないと痛感しながら。


それでも貞夫は、『渉のためだから』と己に言い聞かせていた。


その子に聞かせず、まるで免罪符のような言葉で、自身の正当化を産み出す。


貞夫にそこまでの自覚などない、それほどまでに免罪符が皮切りをぼかしてくれていた。


誰だって、悪役にはなりたくなどない。


もっともらしい言い訳が、自身の悪を薄くし、綺麗なままで、正義でいられるのだから、貞夫は本心すらにも蓋をした。