土蔵の中に電気は通っておらず、天窓も閉めているため、中に入るときは明かり代わりに扉を開けっ放しにしておく。


外気がぶわっと中に入るなりに舞うホコリ、湿ったカビの匂いとタンスにずっと入っていた服のような干からびた匂いが鼻腔を通る。


土蔵の中は広いのだろうが、物で溢れかえり狭さが際立つ。


そのほとんどが『お茶』とかかれた大きな桐の箱なんだが、中身は衣服が詰め込まれていた。


昔から受け継がれてきたと言いながら、神主の名残たるものは何もなく、要らない物ばかりの物置と化した土蔵。


お宝なんてあるはずがないのだが、置かれた桐の箱の量が量だけに「きっとこのなかになにかある」と僕は探検家にでもなった気がして、意気込んでいたものだ。