なら何故、離婚をする?
貞夫が悩むことなど、所詮は『離婚したから』が皮切りであり、離婚しなければ少なくとも、渉を捨てずともいい生活を続けられたはずだった。
貞夫は『やり直せないか』と考えてはいたものの、すぐに拒絶したあたり、早くこの家(苦痛)から逃げたかったのだろう。
居心地が悪い家。
前まではビジネスホテルに泊まっていたが、荷物をまとめようと最近になって仕方がなく戻ってきたほど、貞夫にとって百々の家に未練はなく、逆に近づきたくないとも思えていた。
そんな場所にいることなどできず、我慢ができなくなった貞夫は家を出ていく。
離婚してまで決別をしたいほどに。
――渉を捨ててまで、逃げたいほどに。


