彼女に顔向けできない顔が、口端に出てきてしまう。ほころぶ唇が、震えてきた。
落ちつけ、何を今更……今更だろうに、なんで今日に限ってこんなことを思ってしまうんだ。
「……」
手に持った箱が僅かに凹む。何故かと思えば、震えが移ったらしい。気取られないように籠めた力が、指先に集中してしまう。
なんで、今日に限って。平静を保てば不自然になる。誕生日だから?いいや、誕生日だからってなんだ?
僕は変わらない。
ずっとこのままで、これからも五十鈴さんたちを裏切って――欺いて、笑っていなきゃいけないのに。
「……っ」
それがいいんだ。
優しさなんて要らない(ほしい)、けれども優しくしてくれる心遣いを無駄にできず(できて)、本音を隠せば彼女は安心していられるから(隠そうと)、眩しい笑顔を壊したくないから(本音を壊してまでも)、僕なんかの(ゴミが)、僕のせいで(迷惑を)、こうして笑ってくれる彼女に(ごめんなさい)、応えたいから(だから僕)――


