もっともいない当人は、五十鈴さんの悔しがりを想像してほくそ笑んでいるかもしれない。
「というか、日付関係ないって、関係なくないだろう!私はあいつに負けてなどいないっ、私が渉に一番におめでとうを言ったんだ」
誕生日は今日だからなっ、と正論を言うのに何故か負け犬の遠吠えみたく聞こえてしまう。
僕としては、別に日付は関係ない、祝ってくれるその心遣いで嬉しいものなのだけど。
「そうだろう、渉!私は断じて、あいつには負けていないなっ」
「はい……」
いつの間にか勝ち負けの話になっていたのだが、本人前にして負けてますよだなんて言えずに頷いた。
そもそも五十鈴さんが、なんでこんなに『一番にお祝いの言葉を贈りたい』のか分からないのだけど。


