中指斬残、捌断ち儀



渉を育てるならば、幼稚園に送り出し、迎えにも行けて、一緒にご飯を食べて、寝てやれるぐらいの世話が必要だが、会社の勤務時間を考えれば、どう見積もっても、何一つこなせていない。


そうなれば貞夫の両親に面倒を、とはいかない。婿養子になったこともそこが原因だ。


貞夫の両親はもうなくなり、親戚との縁もほとんどなかった。そんな顔見知り程度の人物に渉を預けられるわけもなく、誰も頼る人がいない貞夫は一人で最善を考えるしかなかった。


考えた結果が、渉を手離すだった。


相手は話に出ていた喜美子。預けられる相手を変えられないかと貞夫なりに奮闘してみたが、自身の身内はもちろん、百々家とて全滅。


施設に預けられないかと問い合わせてみたが、『きちんとした理由もなく子供を手離すだなんて、どうかしている』と説教をくらう始末。