中指斬残、捌断ち儀



明子に関しては、流産で精神を患い、とてもじゃないが子育てに専念できるわけもなく、義理両親に関しても渉を忌み嫌っている。


百々の家におくこと自体が危険だと貞夫は思い、ならば親権は自分にしようとも思ったが――現実は、甘くなかった。


現実というよりは社会か。


普通のサラリーマンたる貞夫が子供一人を育てられる余裕はなかった。


もともと給金が足りないと明子までもをパートに行かせていたほどだ、いくら渉と二人暮らしとは言え、仕事を疎かにしてしまえば、それなりに不自由な目に合わせるかもしれないし。

現実問題、会社の業務が子育てするからという理由で緩くなるはずがなかった。


残業に残業、休日出勤とてざらではなく、勤務外手当てがあるからこそ、それなりの生活を送れていたのに、なくなった時のことを考えれば頭痛すらも覚える。