素足であるのは分からなかった。さざめきさんはそんなところにまで目配せしていたのか。
「一人でって……」
「徘徊は何も認知症だけの症状じゃない。その時の状態、気分(波)にもよるが歩く気になればどこまでも歩ける。歩道を歩き、赤信号で止まることもできるんだ。
楽しかった時期に帰りたいとさ迷うわりには、頭の隅に常識はある。もっとも、いくらかのリハビリテーションは必要だが」
檻つきの病院から退院。
檻つきというのは脱走しないためもあるが、徘徊の旨も含まれているのか。まだ徘徊するのに退院していいのかと思えど、徘徊しても危険なことにはならないならそれはそれでセーフゾーンに入るらしい。
噛みつく犬が外を出回るなら何がなんでも隔離しておくのが先決だが、噛みつきもしない事故にも合わない犬が脱走してもそう心配の種はないということか。


