中指斬残、捌断ち儀



壁の時計がやけに響くリビングだった。


そういえば、こんなに静かにリビングで寛げたのはいつ以来だとも思えるほど、この場所は大人たちの鬱憤発散場に使われていたと自覚した。


家は唯一の憩いの場なのに、いつの間にか、貞夫の憩いの場は仕事場になっていた。


嫌気さす義理両親もおらず、家事をしなくなってヒストリー起こす妻などがいる家になど帰りたくはなく、なぜ帰っていたかと言えば渉のためで――


「……」


そう“綺麗ごと”で己すらも欺く貞夫は、額に手を置いた。


脂っこく薄くなってきた生え際を手で撫でて、それらしい言い訳で自身を美化していることに、「なんだ、僕もあいつらと同じか」と自嘲した。