中指斬残、捌断ち儀



行きはよいよい、帰りは怖い。そんな言葉を思い出す。


「伯母さん、どうして……」


整った息で独り言のように呟けば、さざめきさんが反応してくれた。


「一番楽しかった時期に帰っているだけさ」


どこか哀れむような声だった。


「精神疾患において意識の退行はそう珍しくない。でたらめでしかない現実の中生きる人たちは、いつだって辛いことから逃げていたい。

あの日に戻りたいよりももっと上、境界線の向こう側にあるようなあの日を繰り返す。逃げているとも破綻しているとも分からないまま、あの人はあの人の現実(今)を生きているだけだ」


「伯母さんの現実……」