ゆっくりとしたペースで、早いリズムのメトロノームが遅くなっていくようなイメージで。
「大丈夫。分かるね?息を吐いて、そう、大きく。そうだ」
僕の体を階段から落ちないように抱くさざめきさんの右手。気づけば、左手は僕の顔下半分を覆っていた。
完璧な蓋ではないにしろ、テントのように丸まり被さった彼の手の中で呼吸をする。
「吐いた息をまた吸うようにだ。そう、偉い偉い。心配いらない、大丈夫。深呼吸するつもりで」
背中をさすり方が僕の肺の動きに合わせているみたいだった。早かったものが遅く――徐々に呼吸の仕方を思い出す僕に合わせてくれる。
覆い被さる手も広がっていき、籠った僕の熱い空気ではなく冷たい外気も混じり始めた。


