(三―二)
明子と貞夫の離婚が決まったのは年明けのことだった。
年明けとあってか周りは活気に溢れているも、百々家には関係なく、元を正せば半年前から家族間の繋がりが希薄となり、今まで同じ屋根の下にいたことさえも嘘のように思えた。
両親の仲を繋ぎ止めていたのは渉であったものの、そもそも、『なんでこんなことになった』と思い返せば――それは残酷な考えにたどり着くと貞夫は考えるのをやめて、離婚届の記入を再開した。
既に明子の名前が書かれた緑の紙で、つい『やり直せないか』とリビングにあるソファーに貞夫は項垂れるが、どうあっても『ああなった明子とは再構築不可』と拒絶する自分もいた。


