そうとは知らない僕は、よく土蔵の中にこっそりと入っていた。


内向的でも五歳ぐらいになれば好奇心が先達。三歳四歳の頃ならば、「危ないから入っちゃダメ!」と入る度に怒られていたので滅多に土蔵に足を踏み入れなかったが、知能――悪知恵がついてきた五歳あたりから、『親に見つからずに入る方法』というのを見つけてしまったのだから、さあ大変、というやつだ。


単にそれは、「一人で留守番できるだろう」とした親たちの考えを掻い潜った、そんな家に誰もいない時が多くなっただけの話でもあるが。


その日も僕は土蔵に足を踏み入れた。


特に何をするわけでもないし、土蔵に何か特別なものがあるわけでもないが、暗くて古い怖い場所に入ったというだけで僕の好奇心は満足だったのかもしれない。