寸でのところで引っ込められたものだから、僕の手は空のまま握られる。
なんだろうと見ていれば、さざめきさんが水虫キラーを箱から取り出した。
チューブ型の小さいものだ。水虫キラーのロゴがでかでかと書かれたそれを右手に持ったまま……左手で、ドクロウィンクの箱を取り出した。
ドクロウィンクの中にも水虫キラーと同じチューブ型の塗り薬、バイオハザードマークがあったがシールらしくさざめきさんはそれを剥がす。
ロゴがなくなった無地のチューブを水虫キラーの箱に入れて。
「よろしく頼む」
僕の手のひらに置かれたのは、水虫キラーの箱……。
「いやいやいや、ちょっと待ってください!」
箱の中身を劇薬とすり替え、さもナチュラルに渡す行為にはさすがにもの申してしまった。
当の人は、なんのことかわかりませーんと言わんばかりに両手をあげている。さっき持っていた薬を隠して証拠隠滅のつもりか。


