名医らしく鼻頭に乗る金具をくいっと持ち上げて気取るその人だけど、右レンズが蜘蛛の巣になっているメガネでやられても。
それでも大丈夫ならいいかと僕は立ち上がったが、それと同時に男性の鼻から血が垂れてきた。
「あ、あの、血が……」
「ん?」
男性も気づいたらしい、鼻に触って指先で血を確かめる。
「やっぱり鼻が折れてるんじゃ」
「大丈夫100%。――内訳、鼻を打ったせい70%。鼻が腫れていない20%。いやらしいことも思ってないから10%」
「……」
いや確かに起き上がるなりにいやらしいこと思って鼻血だしていたら、ぜんぜん“大丈夫”(まとも)じゃないけど。


