妹が、死んだ。
母親のお腹の中で。
妊娠後期の流産で、まだ見ぬ赤ん坊がお腹からいなくなったと母親はヒステリー気味になった。
情緒不安定が転じて躁鬱を伴ったりと、あの時期はより家が荒んでいたと思う。
「妹が死んだのよっ、ねえ、ねえなんでっ、あなたは悲しんであげないの!」
そうして僕に当たる母親を見ても、僕は泣けなくなっていた。
泣いたら余計に母が泣くのもあるけど、妹が死んだことにあまり実感できなかった。
それを人は冷たいと言うのだろうけど、まだ五歳の子の気持ちに大人は省みないし、大人の気持ちとて子供についていけるはずもなかった。
まだ産まれていない妹。妹がお腹(ここ)にいると、耳を当てたこともあったが、声も動きも、僕にはまったく分からず、曖昧ながら、母親がいるというならいるんだとまとめていたほど、お腹の中の妹は僕にとって“半信半疑”でもあったんだ。


