中指斬残、捌断ち儀



嘘だ。
イメージ的にとかではなく、五十鈴さんの忙しさを長年見てきた僕はそもそも五十鈴さんが横になる場面が想像できない。あったとしたらフクロウ姿でうたた寝するあたりか。


けれども、もしかしたら藤馬さんの言うことが本当かもしれないので、今度それとなく聞いてみよう。『藤馬さんが、こう言っていました』と。


「なんか、嫌な予感がすんだが……。てめえ、俺に復讐する気か?あ?やんのか、ガキ」


「いえ、何も。“僕は”何もしませんから」


僕からは、と心で繰り返す。


「無職でも構わない――つまりはお金要らないのあなたがどうして天然石を売り払うんですか。全部」


許しちゃいけないけど、一個や二個程度ならまだ救いようがあったのにと言えば、藤馬さんが上体をあげた。