「形見って、まさか伯母さんが……!」 「ただの例えを真に受けんじゃねえっ!ああ、ちっ、てめえが調子狂うとこっちまで調子狂うわっ。やってらんねー、つまんねえから帰る!」 紫陽花模様の羽織りを掴んで制止した。 やっと落ち着いてきたか、藤馬さんのペースに乗せられるのは癪だが、このまま帰すわけにはいかない。 「伯母さんの天然石、どこにやったんですか」 この時になってやっと、泥棒らしく藤馬さんは笑うのだった。