ない、どこにも。廊下にも部屋の隅にも転がってないし、天然石だけが綺麗にごっそり抜き取られていた。
「……ああ、そうだ。五十鈴さんに」
まずいと感じた僕は冷静になるため、まず五十鈴さんに連絡をと受話器を。
「おい待てえぇ!パニクりすぎなんだよ、てめえはっ」
ったく、と藤馬さんに受話器をひったくられた。
「ドッキリさせるつもりが逆にこっちがドッキリだ、ボケっ。事の原因が迎えてやったのに無視しやがって、あげくになにっ、奥さまにいきなり告げ口かよっ」
べしっと受話器を定位置に戻す藤馬さんは、ふんぞり返る。
「こんぐれえのことで奥さまに連絡すんじゃねえよ、クソガキっ。どうせあのババアの形見はもう戻ってこないんだからよぅ」


