そんな人に反抗するように僕は玄関で一度、顔をいつもの表情に整えていたのだが。
「……」
大変なことに気づいた。
狭い玄関、入って左手側にある靴箱の上にはこけしと赤べこがあって、“他には何もない”。
「……」
まさかと念のため靴箱の中身を見たがあるのは靴だけ、僕の記憶にある靴箱と今の靴箱を再度見比べて、あるべきものがないのを確認する。
伯母さんの天然石。龍を掘った水晶の置き物がない。
玄関から中に入り、壁に埋め込まれたもの、額縁に飾ってあったもの――
「お、帰ったか、わた――」
居間の茶箪笥上にあったコレクションケースはあったのに、中身の天然石がなくなっていた。
うそうそと焦りながらまた来た道を戻る、居間から玄関、そうしたあとに家中――伯母さんの部屋以外の行けるようになった場所を歩き回ったが、あれだけ目立っていた天然石が一つも残っていなかった。


