中指斬残、捌断ち儀



何もない、何もないのに――“いるんだ”と思える気配があった。


何も見えない暗闇に向けるような不安感。“見えないからこそいると思える気配”が、トイレの中にいるような気がしてならない。


馬鹿なと、そんなわけないと、冷静になれば“気のせい”で済まされることだけど――“中指がないやけに長い手”が彷彿する。


「っ……」


アレだと、視界に映らないものに確信を寄せる。


今まで存在の主張なんかしなかったのに、なんでこんなに“まざまざと教えてくる”んだ。


新しい言葉を覚えた人みたいだ、“使いたくて堪らない”。

なれば、この場合、アレが僕にその気配を教えるのは、気取られるほどの存在(形)になったということなのか。