捻り巻きのコードが受話器を落とさず、宙でバウンドさせる。微かだが、「もしもし」と聞こえたような気もして――
「いかなっ、みずかけを、あなたの、あひゃひゃっ、ためにぃぃ!」
確認する間もなく、左右の壁にピンポン玉みたくぶつかりながら追ってくる伯母さんから僕はまた逃げた。
とりあえず離れたい、と思う先走りは先のことを考えていない。廊下を曲がった後で玄関は逆だと気づいても為すすべはなかった。
突き当たりは浴室で右手側にはトイレという廊下の終わり。このまま廊下にいては袋小路だと、僕は咄嗟にトイレに入り鍵をかけたが――袋小路よりもひどい密室じゃないかと僕は自身によって追いつめられていた。
和式の狭いトイレ。小窓から夕日が差し込み、青いタイルの色替えをしていた。小窓は今の僕では通れるか危ういし、高い位置にあるためにあそこから外に出るのは難しいだろう。


