中指斬残、捌断ち儀



古びた家が僕の荒っぽい駆け足に踏まれて、悲鳴でもあげるかのように廊下が軋んだ。


どこに向かうかなど考えていない。ただ『逃げたい』と思った頭だが、視界に入ってきた電話機で転機を見つけたつもりになった。


廊下に置かれたこじんまりとしたテーブルの上、長年使われた手垢で僅かに黄ばんだ白い受話器が僕には最後の救いに思えた。


居間から伯母さんが追いかけてこないことを見つつ、受話器を取る。耳に当てることも忘れて、無我夢中のまま僕が押した番号は――小学生の時、教えてもらった11桁の番号。


僕にとっての救いとは五十鈴さんしかいなかった。


救急車だの警察だのよりも、“本当に救われたかった僕の頭には五十鈴さんしか出てこない”。