なくなってしまった僕の日常。藤馬さんの言い分を踏まえれば、普通じゃない日常だけど――僕はそちらの方が“安心”だったんだ。
慣れすぎて、悲惨を不幸と思わないほど受け入れすぎて、いざこうして。
「わたるぅ、わたっ、あなたのために、げほっ、あ゛なな、たのため、にぃ」
嗚咽混じりでも、赤子を相手するような猫なで声が混じった伯母さんが“優しく感じられて怖かった”。
異常行動に対してではない、僕に優しくするような伯母さんに“おかしい”と思ってしまう。
その伯母さんが僕の足首を掴む。掴まれるなり全身に鳥肌を立たせ、引き金にでもなったか、僕は居間から逃げ出した。
居間から出るなり、勢い余って壁に激突するも痛みはない。怯まず進めた体で、夕日があまり差し込まない薄暗い廊下をかける。


