額を指で擦る藤馬さんが、僕の言葉で察したらしく、嫌な笑みを出す。
「あー、はいはい。百々について知りてえんなら、諦めろって。歴史なんてもんは教科書に載らねえもん以外、まるっきり需要がねえ。んな地方の神主家系なんか誰も文献にしたためる気もないだろうよ。
ついで、儀式のぎの字も出ねえぜぇ。家系の罪をバレるように隠しちゃいねえって」
「ぎの字もって、藤馬さんは“中指”に関して知っていたじゃないですか」
「“てめえが調べる分には、何も出ねえ”って意味だよ。調べ方が違うからな、そもそも。わたるんがちまちま資料漁るなら、俺は“当事者から見聞きする”だけー。百々を事細かに知りてえなら、見ちゃいけねえもん見てから出直せや」


