奪われる心配をなくしたあと、手帳を手に取った。スケジュール帳というわけでなく、多機能型のノート。
好きなことを思う存分書き込めと、五十鈴さんらしいチョイスだと思った。
「民俗学やらを調べるお前なら、そんなノートがあってもいいかと思ってな」
どこか照れくさそうな五十鈴さんの言葉に、藤馬さんが「はあ?」と声をあげた。
「民俗学だぁ?なに、お前、そんなん調べてんの?聞いてねぇ」
だって言ってないもの、と返したら藤馬さんを苛立たせるために別の言葉を持ってきた。
「結構前から調べてますよ。とは言っても、本格的とまでは行きませんが」
せいぜい図書館に行って本を読む程度だけであり。
「えっと、それで、あの……。今は民俗学っていうよりも、その……都市伝説の類いに興味があるんですよ、ね」


