ちらり、と明子は父親を見たあとに、最後の雫を落とした。
「21の時に、勘当したわ。もうあんな気狂いと関わりたくないから家を追い出して、それでも『人でなし』とかごねて家に押し掛けてくるから、手切れ金として、百々が所有する土地――昔は神社だったんだけど、今は使われていない建物をあの女名義にしたのよ」
それで来なくなったと告げようとすれば、明子の父親がもういいと聞くに耐えなかったらしく、言葉を止めた。
大雑把ながらも、その喜美子という人物の異常ぶりに貞夫は呆然としたが、渉をそいつに預けると思い至り、また怒りを沸かした。


