中指斬残、捌断ち儀



僕に構う気はなくなったか、藤馬さんがあぐらをといて、立てた膝上に腕を乗せた。


「抜け落ちた毛。切り傷から溢れた血液。そんな一部は本体とはまったく関わりない“要らなくなったもの”だと人は考えるが、神道の世界じゃ、“いくら離れても本体に変わりない”って考えなんだよ。

呪術にも持ち得られるな、これは。“感染呪術”ってーの。人体の一部を使って、相手呪うやつ。髪の毛一本に呪現言い続けりゃ、それもきちんとした呪いだ。

呪いでなくとも、戦に行く男に、自身の髪を切って渡す女もいんじゃん。『これを私と思って』だなんて、男を守りたい女の気持ちが一部として切り離されてお守り代わりになったり。

中指に関しちゃあ、こっちが妥当だな。一部とて本体。腐っても鯛よろしく、“神様になった奴の一部を手元に置けば、それ相応の影響力がある”と百々は考えていた。

神様の魂(形)は中指(肉体)に縛られている、一部だけ。いいか?一部だけってのがミソだぜ?

天に召されるわけねえのに神様扱いされた悲運な連中は、“人間の都合良く作られちまった”。なんせ、だあれも間違いだと思ってねえし、“答え合わせしてくれる奴”もいねえからなぁ」