「とんだ気狂い女よ、姉であったこと、私たちの家族であったことすら否定したい最悪な女なの。
自分は選ばれた人間だの言ったと思ったら、16の時に宗教団体に入って、高校中退で……いきなり40過ぎの奴と結婚したと思ったら、子供もできたって……」
言いながら、吐き気でもでてきたか、明子の口が止まる。
ここまで聞く分には貞夫とて顔をしかめてしまった。
宗教だのを聞いてしまえば、ちょうど渉が産まれた年に起こった地下鉄での事件を思い出すのだからなおのこと、貞夫にとってその単語は危険な匂いしかしなかった。
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