「なに……、ふざけ、ないでよ……。あんな気狂い女に、私たちの子を預けられるわけがないじゃない」
震えてさえもいる明子を気遣いながら、貞夫が喜美子に関して聞けば、たった一言。
「恥さらしの女よ」
と返された。
「恥さらし……」
「前に話したじゃない、私には姉がいたって」
「あ、ああ、でも、その人は遠くに引っ越して、音信不通なんだろう」
結婚前に聞いたことだが、音信不通の姉でまとめられただけで、貞夫にとって知らなくてもいい存在にした相手だ。
ただ、なんで姉の喜美子が恥さらしなのかまでは知らない。
明子とて察したか、とつとつと滴る雫のように重々しく答えた。
