「『運良く残った』、ああ、そうだなぁ。ついで言えば、運があったからこそ栄えた――幕末からぐんぐん名声を得ていたのも、『運が良かった』んじゃねえの。
さて、この『幸運』。今でもそうだが、昔の幸運っつーのは『神様が与えてくれる』ものとして考える傾向が強かった。
自分の運命は自分でー、なんて熱血君はいねえだろうな。神職なら、余計に神様を信じただろうしぃ。
全ての幸運――一族の繁栄と血筋の恒久的幸福は、神様が与えてくださるとか、ま、妄想が激しい人たちばっかだったんだろうなぁ」
他人事に違いないが、あまりにもどうでも良さげに呟く藤馬さんが、湯飲みを浅く回す。
「神様が自分たちの幸福を約束してくれることを、人々は膝つきぃの両手合わせぇので、神様へお祈りで現すわけだが。
神様が全員の祈りを聞き遂げるわけがねえ。いくら八百万っても、みんながみんな幸せになるわけもねえ。そもそも、いるかいねえかも分からねえ“どっかの神様”に祈るなんざぁ、不安で堪らねえだろうよぅ」


