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藤馬……藤馬さんのアイデンティティーは悪である。
のだけど、ズボラすぎて悪行することさえめんどくせえという藤馬さんは、その実、この一件以来、実害らしい実害を僕は受けたことがなかった。
時折、春夏秋冬の家に居座っては茶菓子なんだりを要求したり、僕に罵倒……というよりは小学生レベルの悪口を叩くだけで、本当に「何し来てんだ、この人」と反抗期中に滅多に喋らないお父さんが部屋に来たほどの鬱陶しさがあった。……そんな境遇になったことないんで、あくまでも憶測ですけど。
鬱陶しさあっても、追い出すわけにも、反抗的な態度をこの自称最強に取るわけにはいかないかと、僕は藤馬さんが家に来たりするのはごくごく自然のことだと受け入れ初めていた。


