「言い伝えなんかじゃない。戒めだ、我が家の我が血筋の」
「だから……っ、そんな昔の話に固執してどうしますかっ。そんな訳もわからない、二十歳になったら死ぬとか、いきなり言われても……、それが渉を捨てることになぜ繋がるんだ……!」
激昂したところで看護婦が来たが、「すみません」と謝って、軽く注意を受けて事なきを得た。
ふつふつ沸く怒りを貞夫は握りこぶしとともに抑えながら、明子の父親は見据えた。
いつもならば、婿養子だからと義理両親に気を使っていたが、事がことだ。いつものようにへらへら賛同するわけにもいかない。
明子の母親は「婿養子のくせに」と忌々しげにこちらを見ていたが、父親側は目を合わせようともしなかった。


